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大腸がんの概要

大腸がんの概要

近年、鹿児島市でも増加傾向にある大腸がん。早期発見で90%以上が治癒すると言われる一方、自覚症状が現れにくい厄介な病気です。今回は、大腸がんの初期症状や原因、予防法、など大腸がんに関する全てを網羅的に解説します。

気になる便の変化、腹痛、貧血などの症状がある方はもちろん、ご家族に大腸がんの方がいる方、大腸がん検診を検討している方など、鹿児島市にお住まいの方にとって有益な情報が満載です。記事を読み終える頃には、大腸がんの正しい知識と早期発見・治療の重要性を理解し、安心して生活できるようになるでしょう。また、日々の生活習慣における具体的な予防策を知ることで、大腸がんリスクの低減に繋げることができます。

大腸がんは、結腸と直腸からなる大腸に発生する悪性腫瘍です。大腸がんは、腺腫(せんしゅ)と呼ばれる良性の腫瘍から発生することが多く、早期発見・早期治療が非常に重要です。進行すると、腸閉塞や腹膜播種などの深刻な合併症を引き起こす可能性があります。また、肝臓や肺など他の臓器に転移することもあります。

 

1.1 大腸がんの種類

大腸がんは、発生部位、組織型、進行度などによって分類されます。主な種類は以下のとおりです。

種類 説明
腺癌(せんがん) 大腸がんの90%以上を占める最も一般的な種類です。大腸の粘膜から発生します。
カルチノイド 神経内分泌細胞から発生するがんです。比較的まれな種類です。
肉腫 筋肉や脂肪などの結合組織から発生するがんです。大腸がんの中ではまれな種類です。
リンパ腫 リンパ組織から発生するがんです。大腸がんの中ではまれな種類です。

1.2 大腸がんのステージ分類

大腸がんのステージは、がんの進行度を表す指標であり、治療方針を決定する上で重要な要素です。

一般的には、TNM分類と呼ばれる方法を用いてステージを決定します。Tは原発腫瘍の大きさや深達度、Nは所属リンパ節への転移の有無、Mは遠隔転移の有無を表します。

これらの要素を組み合わせて、ステージ0からステージIVまでの5段階に分類されます。

0期
がんが粘膜内にとどまる
Ⅰ期
がんが固有筋層にとどまる
Ⅱ期
がんが固有筋層の外にまで浸潤している
Ⅲ期
リンパ節への転移が見られる
Ⅳ期
血行性転移(肝転移、肺転移)または、腹膜播種がある

詳しい内容につきましては国立がん研究センター がん情報サービスホームページをご覧ください。

大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]
大腸がん(結腸がん・直腸がん) 治療:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ]

1.3 大腸がんの発生部位

大腸がんは、大腸のどの部位にも発生する可能性があります。発生部位によって、症状や治療方法が異なる場合があります。主な発生部位は以下のとおりです。

  • 結腸がん: 上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に発生するがんです。
  • 直腸がん: 直腸に発生するがんです。

1.4 大腸がんの危険因子

大腸がんの発生には、様々な要因が関与していると考えられています。主な危険因子は以下のとおりです。

  • 加齢: 年齢を重ねるごとに大腸がんのリスクは高まります。
  • 食生活: 動物性脂肪や赤肉の過剰摂取、食物繊維の不足などは、大腸がんのリスクを高める可能性があります。
  • 喫煙: 喫煙は大腸がんを含む様々な種類のがんのリスクを高めます。
  • 飲酒: 過度の飲酒は大腸がんのリスクを高める可能性があります。
  • 運動不足: 運動不足は大腸がんのリスクを高める可能性があります。
  • 肥満: 肥満は大腸がんのリスクを高める可能性があります。
  • 家族歴: 家族に大腸がん患者がいる場合、大腸がんのリスクが高まる可能性があります。
  • 炎症性腸疾患: クローン病や潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患は、大腸がんのリスクを高める可能性があります。

2. 大腸がんの罹患数と死亡率

大腸がんは、日本における主要な癌の一つであり、罹患数と死亡率の両面で高い数値を示しています。

男女合わせた罹患数は増加傾向にあり、近年では胃がんを抜いてがん全体の第1位となっています。死亡率についても、依然として高い水準にあり、特に高齢者において深刻な問題となっています。

大腸がんの罹患数と死亡率の現状を理解することは、予防や早期発見の重要性を認識する上で非常に大切です。

2.1 大腸がんの罹患数の推移

国立がん研究センターがん情報サービスの統計によると、大腸がんの罹患数は年々増加しており、2020年には男性で第2位(1位:前立腺がん)、女性で第2位(1位:乳がん)ですが、男女合わせると最も罹患数の多いがんとなっています。

特に高齢者になるほど罹患率は高くなり、60歳代から急激に増加する傾向が見られます。また、食生活の欧米化や生活習慣の変化なども罹患数増加の要因として考えられています。

男性 女性 合計
2014年 約7.9万人 約6.1万人 約14万人
2018年 約9.2万人 約7.2万人 約16.4万人

2.2 大腸がんの死亡数の推移

大腸がんによる死亡者数も増加傾向にあり、全がんの中でも上位を占めています。2022年の統計では、男性の死亡者数は第2位、女性の死亡者数は第1位となっています。また日本は米国や英国などの先進国の中で、最も大腸がんの死亡率が高くなっています。

早期発見・早期治療により生存率は向上しているものの、進行がんの場合は予後が厳しいため、早期発見のための定期的な検診が重要です。

男性 女性 合計
2014年 約3.8万人 約2.8万人 約6.6万人
2020年 約4.1万人 約3.1万人 約7.2万人

2.3 年齢階級別罹患率と死亡率

大腸がんは、年齢とともに罹患率と死亡率が上昇する傾向が顕著です。特に50歳以降から急激に増加し、高齢になるほどリスクが高くなります。そのため、高齢者の方々は特に大腸がん検診の受診を積極的に検討する必要があります。

2.4 大腸がんの罹患数・死亡数と関連する要因

大腸がんの罹患や死亡には、遺伝的要因、食生活、運動習慣、喫煙、飲酒などの生活習慣が複雑に関係していると考えられています。赤肉や加工肉の過剰摂取、食物繊維の不足、運動不足、肥満などがリスクを高める要因として指摘されています。

また、炎症性腸疾患(クローン病や潰瘍性大腸炎)の既往がある場合も、大腸がんのリスクが高くなることが知られています。

3. 大腸がんの初期症状

大腸がんは初期段階では自覚症状が現れにくい病気として知られています。

しかし、進行するにつれて様々な症状が現れ始めます。早期発見・早期治療のためにも、下記のような症状に気づいたら、放置せずに医療機関を受診することが重要です。

3.1 代表的な初期症状

大腸がんの初期症状は非特異的で、他の消化器疾患と区別しにくい場合があります。そのため、これらの症状が必ずしも大腸がんを示すとは限りませんが、注意が必要です。

症状 詳細
血便 鮮血の便や、黒っぽいタール状の便が出ることがあります。痔だと思って放置してしまうケースも多いですが、大腸がんの可能性も考慮し、専門医の診察を受けることが大切です。
便通異常 便秘や下痢が続く、便が細くなる、残便感があるなどの症状が現れることがあります。普段の便通と比べて変化が見られた場合は注意が必要です。
腹痛・腹部不快感 下腹部痛や腹部膨満感、腹部の張りなどが続くことがあります。これらの症状は他の消化器疾患でも見られるため、自己判断せずに医療機関を受診しましょう。
貧血 大腸がんからの出血が原因で、貧血を起こすことがあります。貧血の症状としては、めまい、動悸、息切れ、顔色が悪いなどが挙げられます。
体重減少 原因不明の体重減少も大腸がんのサインの一つです。食欲不振を伴う場合もあります。

3.2 進行した場合の症状

大腸がんが進行すると、さらに深刻な症状が現れることがあります。

症状 詳細
腸閉塞 がんが大きくなって腸管を塞いでしまうと、腸閉塞を起こすことがあります。激しい腹痛、嘔吐、便秘などの症状が現れます。
イレウス 腸閉塞がさらに悪化すると、イレウスと呼ばれる状態になり、緊急手術が必要になることもあります。
腹膜炎 がんが腸管を突き破ると、腹膜炎を起こすことがあります。高熱、激しい腹痛などの症状が現れ、命に関わる危険な状態です。

これらの症状は他の病気でも起こりうるため、自己判断は危険です。少しでも気になる症状があれば、早めに当クリニックへ来院ください。特に、血便や便通異常が続く場合は、大腸がんの可能性を考慮し、早急に当クリニックを受診することをお勧めします。

4. 大腸がんの発生原因

大腸がんの発生原因は、未だ完全には解明されていませんが、様々な要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。大きく分けて、遺伝的要因環境的要因の二つに分類されます。

4.1 遺伝的要因

家族歴がある場合、大腸がんのリスクが高まることが知られています。これは、遺伝的に大腸がんになりやすい体質が受け継がれるためです。具体的には、家族性大腸腺腫症(FAP)リンチ症候群(HNPCC)などの遺伝性の大腸がん症候群が挙げられます。これらの症候群は、特定の遺伝子の変異が原因で発症し、若年での発症や多発性の大腸ポリープなどが特徴です。

家族に大腸がんの方がいる場合は、一度専門医に相談することをおすすめします。

また、遺伝性の大腸がん症候群以外にも、遺伝子多型と呼ばれる、遺伝子のわずかな個体差も大腸がんのリスクに影響を与えていると考えられています。複数の遺伝子多型が組み合わさることで、大腸がんの発症リスクが変化するとされています。

4.2 環境的要因

環境的要因は、生活習慣や食生活など、私たちの周りの環境によって影響を受ける要因です。大腸がんの発生に大きく関わっていると考えられている環境的要因には、以下のようなものがあります。

要因 詳細
食生活 高脂肪・低繊維食赤肉や加工肉の過剰摂取野菜や果物の不足などが、大腸がんのリスクを高めるとされています。
運動不足 運動不足は、腸の蠕動運動を低下させ、発がん物質が腸内に長くとどまる原因となるため、大腸がんのリスクを高めると考えられています。
肥満 肥満は、インスリン抵抗性や慢性炎症を引き起こし、大腸がんのリスクを高めるとされています。
喫煙 喫煙は、大腸がんを含む様々ながんのリスクを高めることが知られています。
飲酒 過度の飲酒は、大腸がんのリスクを高めるとされています。
加齢 加齢に伴い、細胞のDNAに損傷が蓄積しやすくなるため、大腸がんのリスクも高まります。
炎症性腸疾患 潰瘍性大腸炎クローン病などの炎症性腸疾患は、長期間にわたる腸の炎症が、大腸がんのリスクを高めるとされています。

これらの要因に加えて、近年では、腸内細菌叢のバランスの乱れも大腸がんの発症に関与している可能性が指摘されています。腸内細菌叢は、私たちの健康に様々な影響を与えており、そのバランスが崩れることで、腸内環境が悪化し、大腸がんのリスクを高める可能性があると考えられています。

大腸がんの発生原因は多岐にわたるため、特定の要因を避けるだけでは完全に予防することはできません。しかし、バランスの取れた食生活、適度な運動、禁煙、節酒など、健康的な生活習慣を心がけることで、大腸がんのリスクを低減することができると考えられています。

5. 大腸がんの早期発見

大腸がんは早期発見が非常に重要です。早期であればあるほど、治療の負担が少なく、生存率も高くなります。自覚症状が少ないため、定期的な検査が不可欠です。

5.1 大腸がん検診の種類と方法

大腸がんの早期発見には、様々な検診方法があります。主な検診方法には、便潜血検査と大腸内視鏡検査があります。

5.1.1 便潜血検査

Stool test

便潜血検査は、便に含まれる血液の有無を調べる検査です。簡便で費用も比較的安価なため、広く普及しています。

2日分の便を採取し、検査機関に提出します。便潜血検査で陽性だった場合は、精密検査として大腸内視鏡検査を受ける必要があります。便潜血検査は、大腸がん以外にも、痔核やポリープなどでも陽性となることがあります。

検査方法 メリット デメリット
免疫法 感度が高い 便の保存状態に影響されやすい
化学法 安価 感度が低い

5.1.2 大腸内視鏡検査

Colonoscope1

大腸内視鏡検査は、肛門から内視鏡を挿入し、大腸の内部を観察する検査です。大腸がんの早期発見に最も有効な検査方法とされています。

検査中にポリープなどが発見された場合は、その場で切除することも可能です。検査前に腸内洗浄を行う必要があるため、事前の準備が必要です。また、検査中は多少の痛みや不快感を伴う場合があります。鎮痛剤や鎮静剤を使用することで、痛みや不快感を軽減することができます。

5.2 大腸がん検診の受診間隔

便潜血検査は、1年に1回受診することが推奨されています。大腸内視鏡検査は、ポリープなどが発見されなかった場合は、5年に1回程度の受診で十分とされています。ただし、医師の指示に従って受診間隔を調整することが重要です。

5.3 大腸がんの早期発見のためのポイント

大腸がんの早期発見のためには、以下のポイントに注意することが重要です。

  • 定期的に大腸がん検診を受診する
  • 便通の変化に注意する(便秘や下痢が続く、血便が出るなど)
  • 腹痛や腹部膨満感などの症状がある場合は、医療機関を受診する
  • 大腸がんのリスク因子(加齢、家族歴、食生活など)に注意する

大腸がんは早期発見・早期治療が重要です。定期的な検診と、体の変化に気を配ることで、早期発見につなげましょう。

6. 大腸がんを予防する方法

大腸がんは、生活習慣の改善によって予防できる可能性が高いがんです。
食生活、運動、禁煙など、日々の生活における様々な要因が大腸がんのリスクに影響を与えます。
具体的な予防策を以下に詳しく解説します。

6.1 食生活の改善

食生活の改善

バランスの取れた食生活を心がけることは、大腸がん予防の第一歩です。食物繊維を豊富に含む食品、ビタミン、ミネラルなどを積極的に摂取しましょう。

逆に、過剰な脂肪摂取、特に動物性脂肪の摂りすぎは、大腸がんのリスクを高める可能性があるため注意が必要です。

6.1.1 推奨される食品

以下の食品は大腸がん予防に効果的と考えられています。

食品群 具体的な食品 効果
野菜 ブロッコリー、キャベツ、ほうれん草、トマトなど 食物繊維、ビタミン、ミネラルが豊富
果物 バナナ、りんご、オレンジ、キウイフルーツなど ビタミン、ミネラル、抗酸化物質が豊富
豆類 大豆、枝豆、豆腐、納豆など 食物繊維、タンパク質が豊富
きのこ類 しいたけ、まいたけ、しめじなど 食物繊維、β-グルカンが豊富
海藻類 わかめ、昆布、ひじきなど 食物繊維、ミネラルが豊富

6.1.2 控えるべき食品

以下の食品は過剰摂取を控えることが推奨されます。

  • 赤肉(牛肉、豚肉など):過剰摂取は発がんリスクを高める可能性があります。
  • 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコンなど):発がん性物質が含まれている可能性があります。
  • 高脂肪食品:動物性脂肪の過剰摂取は、大腸がんのリスクを高める可能性があります。

6.2 適度な運動

motion

定期的な運動は大腸がんのリスクを低下させる効果があるとされています。ウォーキング、ジョギング、水泳など、無理なく続けられる運動を習慣化しましょう。

1日30分程度の軽い運動でも効果が期待できます。

6.3 禁煙

喫煙は大腸がんを含む様々ながんのリスクを高めることが知られています。禁煙は、大腸がん予防だけでなく、健康全般にとって非常に重要です。

禁煙が難しい場合は、医師や専門機関に相談してみましょう。

6.4 適切な体重管理

肥満も大腸がんのリスクを高める要因の一つです。バランスの取れた食生活と適度な運動を組み合わせ、適切な体重を維持するように心がけましょう。

6.5 定期的な検診

大腸がんは早期発見・早期治療が非常に重要です。40歳以上になったら、定期的に大腸がん検診を受けましょう。便潜血検査や大腸内視鏡検査など、様々な検査方法があります。医師と相談し、自分に合った検査方法を選びましょう。

これらの予防策を実践することで、大腸がんのリスクを軽減できる可能性があります。ただし、これらの対策を講じていても大腸がんになる可能性はゼロではありません。少しでも気になる症状がある場合は、当クリニックにご相談ください。

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