主に鶏肉に存在するカンピロバクターとは
前回は魚介類によって起こる食中毒であるアニサキス症についてご紹介しました。今回は主に鶏肉などによって感染することが多い食中毒であるカンピロバクターについてご紹介したいと思います。
カンピロバクター(Campylobacter)は、特に鶏肉や未殺菌の水を介して感染することが多い、食中毒の原因となる細菌の一種です。カンピロバクター食中毒は特に東南アジアなど熱帯・亜熱帯地域に多く、世界中で発生していますが、我が国でも近年、発生件数が多く報告されており、食中毒病因物質別発生件数の中で2番目に多い食中毒となっています。
原因と感染経路
1.汚染された食べ物の摂取
生または加熱不十分な鶏肉
カンピロバクターは鶏の腸内に多く存在するため、特に鶏肉に多く存在します。鶏肉の加熱調理が不十分であった場合、カンピロバクターが生き残り、食中毒を引き起こすことがあります。
生乳や未処理の乳製品
カンピロバクターは未殺菌の牛乳にも存在することがあります。未殺菌の乳製品を摂取することによって感染する可能性があります。
汚染された飲料水
不適切に処理された飲料水を通じてカンピロバクターに感染することがあります。特に、特にキャンプやアウトドア活動で自然の水(井戸水や河川水など)をそのまま飲む場合、汚染された水から感染することがあります。
2.交差汚染
台所の調理器具や作業台の汚染
生の鶏肉やその汁が他の食品や調理器具、手に触れると、交差汚染が発生します。この場合、他の食品を介してカンピロバクターが体内に入ることがあります。
主な症状
カンピロバクター食中毒の主な症状は、感染後2〜5日の潜伏期間を経て発症します。
腹痛
激しい腹痛が特徴です。特に下腹部の痛みが強く、しばしば痙攣のような痛みを伴います。
下痢
軽度から重度までの下痢があり、時には水様性または粘液を含むこともあります。時に血便が見られることもあります。
その他
発熱(38°C~40°C)や悪寒、吐き気や嘔吐、全身倦怠感などを伴うことがあります。
症状は通常1週間程度続きますが、まれに重篤な合併症を引き起こすことがあります。
合併症
ギラン・バレー症候群
末梢神経に影響を与える自己免疫疾患で、手足の麻痺や運動機能の低下が起こることがあります。
反応性関節炎
関節の痛みや炎症が感染後に発症することがあります。
治療
カンピロバクターによる食中毒は、通常は対症療法で対応します。軽度の場合、特別な治療を必要とせず、十分な水分補給と休息で回復することが多いですが、場合によっては治療が必要になることがあります。
水分補給
下痢や嘔吐による脱水を防ぐために、十分な水分を摂取することが重要です。特に重度の下痢を伴う場合には、電解質を含む飲料を摂取することが推奨されますが、重度の脱水症状がみられる場合は、点滴による水分補給を行います。
抗生物質
重症の場合、または免疫力が低下している患者には、抗生物質(エリスロマイシンやシプロフロキサシンなど)が投与されることがあります。
まとめ
カンピロバクターによる食中毒は、特に生や加熱不十分な鶏肉の摂取が原因で発生しやすく、正しい調理法と衛生管理によって予防可能です。もし感染した場合でも、早期に適切な処置を行うことで重篤な合併症を防ぐことができます。また鹿児島は鶏肉の消費量が多い県であり、焼き鳥や鳥の刺身などの鳥料理が大変美味しくて有名ですが、適切な調理を行って食べることが重要です。
当クリニックではカンピロバクター腸炎に対して、専門医による適切な診断と治療を行っております。鶏肉などの肉類を食べた後などに、急な腹痛や下痢などの症状があればお気軽にご相談ください。
参照:
鶏料理を楽しむために~カンピロバクターによる食中毒にご注意を!:農林水産省(参照2024.10.23)
https://www.maff.go.jp/j/fs/campylobacter.html