急増するアニサキス症に注意しましょう!
秋と言えば食欲の秋といわれ、豊かな実りとともに食材が最も美味しくなる季節です。栗やキノコ・松茸、柿や梨などの山の幸に加え、サンマや鮭など海の幸にも恵まれる季節です。しかしこの美味しい海の幸による食中毒が近年増加しています。その代表的なものがアニサキス症です。今回はこのアニサキス症についてご紹介したいと思います。
アニサキス(Anisakis)は、主に海産魚介類に寄生する寄生虫の一種で、生の魚や未調理のシーフードを食べることで、人間に感染することがあり「アニサキス症」と呼ばれる病気を引き起こします。アニサキスを原因とする食中毒は食中毒病因物質別発生件数の中で最も多く、近年急増しています。
アニサキスは特にサバ、イワシ、アジ、サケ、イカなどの魚介類の内臓や筋肉に寄生していますが、日本では古くから寿司や刺身など生のままで食べる食文化に加え、消費者の嗜好の多様化により生食する魚の種類や消費量が増加していることが、アニサキス症が増加している原因と考えられています。その他、流通・冷凍技術の進展や海洋環境の変化、自然保護や漁業規制などに加え、医療技術の発展により、アニサキス症の診断能力が向上していることなどが増加の原因と考えられています。
主な症状
アニサキス症の主な症状には以下が含まれます。
- 強い腹痛(特に食後数時間〜1日以内に発症することが多い)
- 吐き気や嘔吐
- 下痢
- 腸閉塞(まれに)
- アレルギー症状(じんま疹、アナフィラキシーなど)
症状は非常に激烈で、急性胃腸炎のような形で現れることが多いですが、自然に治癒することもあります。
治療法
アニサキス症の治療は、寄生虫自体を取り除くことが重要です。
内視鏡的除去
アニサキスが胃に寄生している場合、胃内視鏡(胃カメラ)を使って、胃の粘膜に刺さっているアニサキス虫体を直接確認し、専用の鉗子を使って摘出するのが最も効果的な治療法です。この方法は迅速で、アニサキスを取り除くことで症状が迅速に改善します。また侵襲性が低いため、治療後の回復も早いです。
対症療法
内視鏡的除去が困難なケースや軽症の場合には、痛みや不快感を和らげるために、鎮痛剤や抗炎症薬の投与が行われます。ただし、対症療法だけでは根本的な原因を解消するわけではないため、症状が続く場合には内視鏡による治療が検討されます。
自然排出
アニサキスが胃ではなく腸に寄生している場合、内視鏡での摘出が難しいことがあります。アニサキスは通常、人間の体内で数日から1週間以内に自然に死滅します。そのため、場合によっては自然排出を待ち、症状を緩和するための対症療法が行われます。
手術
まれにアニサキスが腸閉塞などの重篤な合併症を引き起こす場合、手術が必要になることもありますが、これは非常に稀なケースです。
まとめ
アニサキス症の治療は、主に内視鏡による直接摘出が効果的です。症状が軽い場合は、対症療法で回復することもありますが、胃や腸に寄生するアニサキスを早期に除去することで、激しい痛みや不快感を素早く緩和できます。再発を防ぐためには、生魚の取り扱いや調理に十分な注意を払い、予防策を徹底することが重要です。
当院ではアニサキス症に対する内視鏡治療を行っておりますので、生魚などを食べた後に急な腹痛などが出現したらお気軽にご相談ください。 次回は食中毒の原因として2番目に多いカンピロバクターによる食中毒について説明したいと思います。
引用:
1.アニサキスによる食中毒を予防しましょう:厚生労働省(2024.10.21)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000042953.html
2.食中毒統計資料:厚生労働省;(2024.10.21)
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001213031.pdf