もうこれで安心ですね。
ピロリ菌の治療後でも、決して油断はできないんです。そのことを今回はお話していきますね。
目次
ピロリ菌治療後の胃がんリスク
これまでピロリ菌と胃の病気や、ピロリ菌の検査・治療についてご紹介してきましたが、今回はピロリ菌を除菌した後にも胃がんになる可能性があるということについてご紹介します。
ピロリ菌が胃の中に感染していると、胃がんになりやすいというお話をしましたが、実はピロリ菌を治療しても胃がんになる可能性があります。確かにピロリ菌を治療(除菌)することで、胃がんになる可能性は低くなりますが、決してゼロになる訳ではありません。
ピロリ菌が引き起こす慢性胃炎
ピロリ菌は通常幼少期に感染しますが、感染後は胃の粘膜に持続的に炎症が起こる慢性胃炎の状態になり、この慢性胃炎の状態が進行して胃がんが発生すると考えられています。他にも、肝臓に持続的に炎症を起こす慢性肝炎が進行して、肝硬変や肝臓がんが発生したり、ヒトパピローマウィルスによって子宮に持続的に炎症が続くことで、子宮頸がんが発生することが知られています。
このように持続的に炎症が起きることにより、がんが発生することを「炎症性発がん」と呼んでいます。したがって、これらの炎症の持続を早期に止めることで、がん発生リスクは軽減しますので、胃がんに関しては早期のピロリ菌治療が重要です。
胃炎と胃がん
ピロリ菌治療により胃炎の進行は止められますが、実は胃炎の状態は残っています。つまり治療(除菌)により活動性の胃炎は良くなりますが、胃炎を起こした痕は胃の粘膜に残存しているのです。そしてこの胃炎後の粘膜から胃がん発生のリスクがあることが報告されています。また、ピロリ菌除菌を受ける方が増加していることもあり、近年では除菌後の胃がん発見数も増加傾向にあります。
除菌後の胃がんは、胃炎の程度が強い方や長期間胃炎状態にあった方、また胃炎の範囲が広い方がリスクが高いと言われており、除菌してから数年から数十年後経過して発生することもあります。さらに除菌後の胃がんは発見するのが難しいのも特徴です。
ピロリ菌治療後の定期検査
そこで大事なのは、除菌しても油断せず、定期的に検査を受けて胃がんが発生していないかを確認することです。がんは早期がんと進行がんがありますが、ほとんどのがんは早期に見つけ適切に治療を行えば、一般的には生存率は9割以上と言われています。逆に進行がんで見つかると生存率は大きく低下します。特に胃がんや食道がん、大腸がんなどの消化管のがんは、以前なら開腹や開胸で外科的に手術していましたが、内視鏡治療が大変発達した現在では、早期がんであれば内視鏡で治療ができるようになりました。したがって胃がんに関しては、ピロリ菌除菌後も胃カメラ検査を受けて早期にがんを見つけることが何より重要です。
最近の胃カメラは以前と比べ負担が少なくなっており、さらに画質の向上や特殊な技術が導入され、以前は発見できなかったような早期がんも見つけられるようになっています。特に除菌後胃がんは発見が困難ですので、除菌後の方は胃カメラでの検査が学会でも推奨されています。
当院では細径内視鏡という5mm弱の太さの内視鏡を使い、苦痛が少なく体に負担の少ない検査が可能で、さらに最新の内視鏡機器と内視鏡専門医による精度の高い検査を実施しており、除菌後胃がんなどの発見が困難ながんの発見も可能です。除菌後しばらく検査を受けていない方など、心配な方は是非当院での内視鏡検査をお勧めします。